私のアトリエからの…

アーティストの未来

「芸術の定義」

一定の素材・様式を使って、社会の現実、理想とその矛盾や、人生の哀歓などを美的表現にまで高めて描き出す人間の活動と、その作品。文学・絵画・彫刻・音楽・演劇など

新明解国語辞典によるところの芸術とはこういうことのようです。

どうして今更、芸術とは?などと小難しいコトに思考を傾けるようになったかというと、先日20年余りのアーティスト活動の中で最愛最大!私にしてみれば奇跡のような出来事が起こったからです。

「そんなモノは芸術のジャンルに無い!」

遡ること20年近く前になります。

私は洋書で見つけたドールハウスに魅せられて、ミニチュア制作に明け暮れていました。

作品もそれなりに出来上がってきたし、誰かに観て欲しい気持ちが大きくなり、展示してくれそうな所を探してまちに出ました。そこで私はとてつもなく大きな壁にぶつかることとなったのです。

「あなたの作っているモノは何になるの?」

そうなんです。。。私が作っているモノは現存している芸術作品のカテゴリーに当てはまる分野が思い当たらなかったのです。

「そんな玩具は芸術のジャンルに無い。絵画や彫刻のような崇高な創作品以外は作品では無い!」

そう言われて私は、作品もろとも作家としての存在自体を否定されてしまったのです。

苦笑いでやり過ごしたのですが相当傷つきました。

が!その怒りがアーティスト魂に火をつけ、活動の場を東京、大阪などの県外でのブース出展、そしてインターネットに移行して世界が大きく広がりました。

ネットで繋がったモノ作り仲間やクライアントに支えられ、コツコツと作品を作り続けて5年の月日が流れていきました。

鳥取のまちに拒絶された傷は癒えてはいないけれど、大好きなまちで作品展を開いてみたいと言う思いは強くなる一方で・・・

当時別件でお世話になっていた、商工会議所の方に相談してみました。

そして、ご紹介頂いたのが駅前サンロード商店街の中にある「ギャラリーそら・スペース空(くう)」でした。

「作家と名乗ることを恐れてはいけません!」

初めて展示のお願いに伺った日・・・私は生涯忘れることがないであろう特別な日となりました。

絶対断られるに決まっているが・・・ダメもとだ!!がんばれ!私!

そう気合を入れて恐る恐る。。。オーナーの安井さんに作品を見て頂き個展開催のお願いをしました。

安井さんは実にあっさりと「あら!面白いですね~!いいですよ~!」と快諾して下さいました。

あまりにあっさりだったので「え??これですよ?作品はこれですよ?いいんですか?!」と自ら依頼に行った立場も忘れて聞き返していました。

嬉しさのあまりに泣きそうになりましたが、ぐっと堪えて冷静になりギャラリーを見渡すと、心の真に響くような美しい絵の数々が展示してあることに気が付きました。

その日は岡山在住の画家 TAZUKO(多鶴子)さんの個展が開催されていました。

幸せなことにTAZUKOさんが在廊されており、色々とお話をさせて頂きました。

私の作品を見て「これは可愛い作品を作っている作家さんですね!」と褒めて下さいました。

私は照れも半分あったのですが、本心で「いえいえいえ!作家なんてとんでもない!ただのクラフターですよ~」と答えていました。

その言葉を聞いてTAZUKOさんは

「自分の感性でもって何かを作り上げ何かを表現する人は全て作家ですよ。」

「私はアインシュタインもアーティストだと思っています。」

「作家と名乗ることを恐れてはいけません!」

と、心が奮えるような言葉をかけて下さいました。

ここから私は、アーティストそして表現者として、活動していくことへの決意と覚悟を固めたのでした。

「自己満足ではダメ!人を惹きつけ魅せられる空間作りを!」

初めての個展は搬入日込みで3日間でしたが実りの多い時間でした。

ポスターは手描き手作り・・・セルフインフォメーションもまともに出来ていませんでした。

そんな作家としての常識が身についていない私に安井さんが丁寧にアドバイスを下さいます。

「相当な時間をかけてクオリティの高いモノを作っているのに作って終わりではもったいない」

「もう少したくさんの人に観てもらう為の創意工夫をしなさい」

共にレイアウトを整え、まちの方々に声をかけて下さり、個展開催の気構えを実践で教えて頂きました。

初個展で安井さんのオーダーを含め作品3点がお客様の元へ旅立つという予想だにしなかった二日間となったのでした。

そして私はこの個展でギャラリーの使用料をお支払いし、ご購入頂いた作品の代金をお客様から頂いた瞬間、商業アートにおけるギャラリーとアーティストの相互関係というコトを身をもって深く実感し知ることが出来たのでした。

「エコノミック・サイクル」

あれから15年

2018年にギャラリーそら2Fスペースにて創作活動20周年の個展を開催することが出来ました。

たくさんの方々にお越し頂き、SNSで称賛や歓びのお言葉をたくさん頂き、恐縮しながらも作家を続けてきて良かったと心の底から思ったのでした。

ギャラリーに使用料をお支払いし、個展の後はクリエイターとしてお仕事をさせて頂く機会に恵まれます。

収入があれば創作活動へのやりがいも格段と違いますし、感性を養う為にアーティスト自体がまちや社会にお金を落としていきます。

芸術は特別なモノでは無く社会のしくみ、経済のサイクルの中に組み込まれている、日々の生活に潤いを与えるモノの一つなのではないかと考えています。

先日、様々なことがきっかけとなりギャラリーそら1Fスペースにて浮世絵アートの個展を開催させて頂けることとなりました。

滞りなく期間が終了し、次のギャラリー1FスペースへのバトンタッチはTAZUKOさんだと知り、感激で胸が一杯になりました。

開催初日に伺いTAZUKOさんへ15年前のお礼を熱く語り尽くしました上に、安井さんとTAZUKOさんに無理を聞いて頂き2ショットを撮らせて頂きました。

強引で一方的だったと申し訳ない気持ちでしたが、私としては奇跡のチャンスを逃すものか!と一生懸命だったのです。

「崇高な芸術とは?アーティストの育成とは?」

20年前に投げかけられた「崇高な創作品以外は作品では無い」という言葉。

いまだに共感できる要素が何一つとして無いのです。

崇高な創作品とは、どのような作品なのでしょうか。

高名な作家の描いた絵画ですか?

美術館に所蔵される作品の数々を指すのですか?

影響力の強い画壇や会派に所属している方々そのものを称するのですか?

私にとっては、ルーブル美術館に所蔵してあるダビットの巨大絵画も、知人の画家がサラッとメモ用紙に描いてくれたイラストも、心を打つ美しさとしては同等レベルにあるのです。

どんな高名な芸術家でも、その土台となっているのは人との関わりや日々の暮らしの中で突き動かされる感性なのではないでしょうか。

崇高な作品は存在するのかもしれませんが、神のような崇高な芸術というのは存在しないのではないかとの自論が浮かんできました。

ただ・・・私には二人のミューズが存在します。

アーティストとしての扉を開けてくれて、表現者としての覚悟を教えてくれた方々。

文化庁の政策に「新進芸術家の育成」という事項が上げられており、具体的に動いているようです。

何らかの思惑があるのかもしれませんが、その分野に国がお金を使うことを明確に掲げているのですから、素晴らしいコトです。

ただしかし・・・

この国には「異質なモノは排除する」という風潮が根付いています。

新しいヒトやモノやコトを育てていくには「受容する」ということから始めていかないと絶対先には進みません。

異質なモノが全て悪質なモノであるという概念は少し横っちょに置いといた方が良いように思います。

アーティストが素晴らしい作品を作り上げるコトと、人々の心に潤いある日常生活とは直結しています。

日々の暮らしを心豊かにするためにも、アーティストの未来を一緒に見つめてみませんか。

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