ヒューマン☆マニア

オキュパイド・ジャパン 藤田嗣治「アッツ島玉砕」

敗戦を全力で受け止めた時代


鳥取県立博物館にて開催中の昭和館巡回特別企画展「くらしにみる 昭和の時代」に行ってきました。
太平洋戦争に関わるモノが主だったのですが当時のリアルな風景や使用していた道具類の展示は人の深い思いが心に重く響くモノもありました。


特に敗戦後のアメリカ統治下にあった日本人の力強い暮らしっぷりには展示物を観ている私のこぶしにもグッと力が入ります。
アメリカ兵の残飯を煮込んで味付けしなおしてシチューにしたもののレプリカには目を見張りました。
シチューの中にはタバコの包装紙と吸い殻が入っています。
残った食べ物を別の人が命の糧で食べるのを知ってて、わざとタバコを入れたに違いない!
このぉ~~~!そいつの根性こそがゴミくずだ!!!
・・・・と、私は心中の誰かに向けて密かに怒りを爆発させていたのでした。。。。

ふと視線を移すと、並びに美しいティーカップとソーサーなどが展示してあります。
そのキュレーションの中の オキュパイド・ジャパン という文字に目を奪われました。

名前:日本 所属:アメリカ国


オキュパイド・ジャパン(Occupied Japan)とは、第2次大戦後の「占領下日本」のことです。
民間貿易が再開された1947年からサンフランシスコ講和条約が発効した52年まで日本からの輸出品には「MADE IN OCCUPIED JAPAN」の刻印を付けるようGHQ(連合国最高司令官総司令部)から命じられていました。

日本という国家が存在しない何とも屈辱的で窮屈な時代だったんだろうか・・・とネガティブに捉える方々は少なく無いと思います。

私は展示物であるオキュパイド・ジャパンのカップ&ソーサーの美しさを眺めながら、ある悲しい絵画を思い浮かべていました。

藤田嗣治 「アッツ島玉砕」
1943年5月の北太平洋アリューシャン列島アッツ島における戦闘を描いた作品です。
従軍画家に従事していた藤田が写真と記憶力で描き上げたリアルで残酷で辛辣な大作ですね。
私が愛してやまない乳白色肌の少女や天真爛漫な猫の要素など微塵も感じ取れません。

藤田自身が「国の為に闘う一兵卒と同じ心境で描いた」と言っている通り
持ち得る技量と魂を込めて戦争の悲惨さを伝え人々の心を大きく揺さぶり続ける絵画です。

従軍画家とは国(軍)からの命を受け、戦争を記録することを職とした画家という立場です。
なのに敗戦後は画家仲間から戦争責任の糾弾を受けることとなるのです。
その中には藤田の才能や欧州で成功していることへの妬み嫉みの私情も数多く含まれている思われますが、藤田はスケープゴートのような形で母国である日本国から追放されパリの地でフランスに帰化します。

戦争はたくさんの人々の魂を奪っていった・・・亡くなった人からのみならず生きている人からも。

抑圧か解放か


これは信楽焼の陶器で出来た兵器です。

私はこんな辛く悲しい焼き物を見たことが無い。。。。

人々の日常生活を担う食器や置物から、人の命を奪うと同時に器自体も粉砕してしまう焼き物を制作しなければいけない現状や、そういうモノの制作だとしてもフォルムの美しさに手を抜かない職人さんの姿勢と心中を思うと言葉に詰まります。


オキュパイド・ジャパンとして日本の職人さんたちが手掛けた数多くの陶器磁器の作品が外国へと旅立って行きました。

今となっては稀少なモノとしてオークションに登場し、著名なコレクターも存在する品々となっています。
私もヤフーオークションでいくつか落札した陶器の中にオキュパイド・ジャパンの表記があり、少し胸が熱くなっています。

オキュパイド・ジャパンの製品は、どれも活き活きと美しい!

戦時中は西洋文化に触れるようなモノ・コトは厳しく罰せられていたはずです。
材料も資材も乏しかった中で作り手の方々は窮屈な思いをしていたと想像できます。

作った製品に「占領下」という文字が入ることが屈辱的だったに違いないと評する方もいらっしゃいます。

しかし
作り手の方々にとって培った技術を存分に発揮できる環境が整った中、手掛けた作品や製品に「占領下」という文字が入る入らないにどれだけの拘りがあったことでしょうか?

オキュパイド・ジャパン

今後このような表記をしなくてはいけないような時代の流れは絶対にあってはならないと思うと同時に
理不尽な抑圧からの解放でもあったのかもしれないとの複雑な思いが駆け巡ります。

ただ・・・良くも悪くも
自身の実力や技量だけではどうにもならない大きなパワーによって思わぬ方向に動かされるという現実があることは心の底に置いておかなくてはいけないことだと思いました。

時代や歴史を振り返り向き合うということは、アーティストとしての未来を見据えることに直結しているということも胸の奥に響いています。

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