まち*ごと

鳥取松崎 汽水空港 マネ「オランピア」

人手の要る湖

東西に細長い鳥取県の丁度真ん中あたりに位置する湯梨浜町松崎

そこに東郷湖という汽水湖があります。

汽水湖というのは、淡水の中に海水が侵入している湖です。
比重の関係で低層が海水で表層が淡水となっており海や淡水の湖と違い自力で全循環を行うことがありません。

海に面した開口部からの海水の比重管理が必要で、環境保全のためには自然と人の英知が共存しなくてはなりません。

その東郷湖のほとりに、一際個性を輝かせている本屋が存在します。

汽水空港

取り扱っている本はジャンルも様々で、古本、新刊、ZINE、リトルプレスと幅広い品揃え
店舗も店主自ら作り上げたオーダーメイド感が心地よい空間となっています。

本は人から人へ知識を伝達共有する最強最古のアイテムです。

木の皮や葉っぱ、粘土板などに言い伝えやおまじないを記し、主に神様や仏様との橋渡しが中心であった本の起源を振り返り

人間の英知が集結したモノを人間のセルフビルドによって建てられた空間で商う。

これ以上無い溢れる魅力的な”人間臭”に小気味よい気持ちが舞い上がってきました。

そして「大スキャンダル」とまで言われ美術界に革命を起こした絵画へと思いを馳せていくのです。

美を象徴から現実へ

エドゥアール・マネ「オランピア」

黒猫とメイドを従えてベッドに横たわる女性

新進画家だったマネが描いたこの絵画は、当時の美術界を激震させ、画家自身も窮地に追い込む程の大スキャンダルへと発展させたのです。

こちらはイタリアの巨匠ティツィアーノが描いた「ウルビーノのヴィーナス」です。

ほぼほぼ同じ構図であるこの絵の徹底的な違いは、ティツィアーノの描いた女性は美の女神ヴィーナスであり、マネが描いたのは装飾品を身に着け、サンダル履きのままベッドに横たわる人間の娼婦であることです。

当時の画壇では人間の女性の裸体を描くことは究極のタブーとされていました。
鑑賞者に教訓を与えるという大義名分の元、エロティシズムな女性の裸や殺人や人が虐げられる表現も”神話”とすることで許容される暗黙のルールが存在していたようです。
マネはその暗黙のルールをキレイさっぱりあっさりと破ってしまったわけです。

マネは徹底して全ての美を”神話”という象徴的な表現から現実的な表現へと移行しています。
日本の浮世絵が手本となっているという不自然な丸みを持たせない平面的な描き方
自然界ではありえない全体をふんわり包むような光の当たり方を排除し現実の彩光を忠実に表現しています。

そして一番魅力的に捉えたのはベッドに横たわるオランピアの表情です。
彼女は屋敷に招かれた高級娼婦。
今も当時も自身を売る商売を喜び勇んで行う女性は少ないと思います。
贈られた豪華な花束にも喜ばず、目の前の画家に妖艶な表情を作ってあげる気などさらさら無く、本来の仕事に徹する無表情がまさに現実を表しています。

マネは神話という象徴的な世界でのみ表現されていた人間の美しさを「本来の人の元へ帰してくれた」
そんな想いが心に響いてくるのです。

正しい答えの無いエリア

東郷湖のほとりにあった駐車場を改装しセルフビルドで建てた3坪の小屋が汽水空港の始まりです。

店主のモリさんは日々頭と身体を使い手を動かし試行錯誤しながら本屋を運営されています。

「秩序、権威、正しい答えのないエリア、それが汽水域です。」

モリさんがWEBサイトの中でお話しされている通り、汽水というのは海水と淡水がぼんやりと混ざり合っているカテゴリーが曖昧な存在です。

「答えが無いから自由!ここで何かを見出して実践の場へと旅立ってもらえたら・・・」

店名の由来となるコンセプトをお聞きした時、ここは”人”で満たされている場所であると強く思いました。

自ら創意工夫をして手と身体を動かし空間づくりを行い、他者に思考と行動のきっかけを語りかけています。

今まさに”人間力”が試される時代

他力本願や神頼みではサバイブ出来ない時代の改革期へと突入しているといっても過言では無い気がしています。

秩序と思いやりを持って自ら思考し実践する押し付けない優しさと強さ。

ここは本を買うという行為以上に”人間力”を養うためのヒントと勇気が見出せる場所。

それぞれの心の真の部分を穏やかに刺激する。そんな魅力を持ち合わせた無二の場所でもあると感じました。

〒689-0711
鳥取県東伯郡湯梨浜町大字松崎434−18
汽水空港

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